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唯一無二の場所

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これは訪問着の袖で「松葉」が描かれています。

見頃と合い印がある場合は必然的に柄を合せるよう、位置が決まりますが、
そうでない場合、こういった単体で柄がある場合、その位置(高さ)は仕立て屋のセンスにゆだねられます。もちろん、できあがりの丈プラス縫い代があるので、どこまでも可能というわけにはいきません。
一般的には柄は高さの半分より下のほうが落ち着くとみられています。

少し位置を変えてみましょう。
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やや下に
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こちらは上に

みなさんはどれが一番落ち着きますか?

わたしは最初の写真の位置が落ち着きます。(ので、この位置にしました)

柄によってはもう少し下、あるいは上がいいかもしれませんが、この柄と大きさではここかなと思います。

これはここという、もっとも適した位置があり、その感覚は我々仕立て屋が常に磨いていないといけないと思っています。

話は変わり、衿づけのラインを縫うときなどにも、どのラインがもっともきれいで無理がなく着やすいかをいつも考えて縫っています。

唯一無二の場所があるはずだと。

必ずしもいつも実際にそうできているとは言えませんが、そのように狙うことは仕事を向上させる、あるいはいい状態をキープする上で大切なことだと思っています。

手前味噌ではありますが、わたしは修行中の始めのうちから先生に「貴女の縫ったきものは着やすい」と言われていました。さきほどの衿づけのラインなどでは着やすさ、着にくさが如実にあらわれます。また、縫った糸に緩むでもなく、きつくなっていないか等。

手仕事では機械ではできないこうした違いがあり、こういった「塩梅仕事」はいつまでも残しておきたいですね。

世の中ではAI技術(人工知能)が日進月歩で進み、シンギュラリティ、つまり、人工知能が人間を追い越す時は2045年とも、それより早いのではないかとも言われています。
この先、人間の労働はどこまで機械に任されてしまうのか、また我々の暮らし自体は、など、これからの数十年はかつてない変化に見舞われるでしょう。

でも、細かな加減は人間に残された仕事、そう信じて環境がどうであろうがやることは変わりません。
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by saki-kss | 2016-10-31 00:08

加賀友禅

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久しぶりにうれしい仕事をすることができました。加賀友禅です。
かつて世の中の景気がよくよいものがどんどん売れていた頃はこうした手描きの友禅やすばらしい技巧の絞り、刺繍などぜいぶん縫ったものでしたが、近年は残念ながらあまり「これはすごい!」とうなるようなものにはありつけていません。
日本は貧しくなったのだとつくづく実感します。景気が上がったなどというのは政府が禁じ手を使って株価を上げる等偽装工作をしているからのことであって、稼いでいるのはほんの一握りのひとであり、
庶民は買いたいものがあっても財布の中身と相談しなければなりません。

と、話はせちがらくなってしまいましたが、わたしたち仕立て屋もそう、きものの作り手である染めや織り、もろもろの職人たちの待遇や後継者不足は危機的になっており、いかにしてこの文化を守っていけるかという悩みは常々抱いているのです。

近年は若い方も着物には興味を持たれる方も多くなったようですが、まずはリーズナブルなところから。しかし、良いものを見るということは大切なことです。いろいろなものを見てよいものと、近頃のインクジェットで染められた偽物との違いを感じていただきたいものです。といってもひとめみればその差は歴然としていますよね。

さて、加賀友禅です。
京友禅との比較でひとつ大きな違いは、京友禅はたくさんの工程を分業でべつべつの職人が手がけるのに対し、加賀友禅は作家さんがすべての工程をこなすことにあります。
このきものも作家の名前が下前おくみに入っています。

加賀友禅は「加賀五彩」という、臙脂・藍・黄土・草・古代紫の五色を基調とし、優雅で上品な印象を持たせるものが多いと思います。
この友禅も華やかというよりは落ち着いた上品さと伸びやかさがありうっとりとします。

わたしは植物にはくわしいほうですが、この植物なんだかわからないのです。。。
と、もしかしてヤマハッカ?ヒキオコシ
たぶんそんなところでしょう。いずれシソ科の小さな花で今の初秋に咲く目立たない花です。
珍しいっ!こういう地味な山野草を持ってくるなんて!
ちなみに作者は女性です。

こうした手描きの良いものは生地も上質のものが使われ縫いやすいのです。
比較するのもあれですが、ポリエステルのものなどは逆に縫いづらい、コテもかかりにくければ
高温にも注意しなければならない。できれば縫いたくないものですね。
良いものを縫えるというのは仕立て屋の喜びです。
もちろんやるからにはどんなものでも手を抜くということはありえませんけれどね。

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by saki-kss | 2016-10-04 22:14 | きものあれこれ